古事記スクール

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小説・新古事記

【新古事記123】寝不足

「朴さん、戻りませんね。 電話してみましょう」 石松さんはそう言うと受話器をとった。その時だった。 「すみませーん」 朴さんが仮眠から戻ってきた。20分ほど時間をオーバーしていた。 「氷川さん、すみません。休んでください」 「いえ、いえ。では石松…

【新古事記122】鞄の中身

1時20分 ロビーから騒々しい笑い声が聞こえてきた。航はフロントへ出た。少し遅れて石松さんが航の後を追った。団体の宿泊客が帰ってきたところだった。出張のサラリーマンだろうか。人数は10名ほどだった。 「えーと、1005」 「お名前をいただけますか?」 …

【新古事記121】ミクロネシアと日本語

「へー、これは確かに美しいですね」 パソコンに映し出された映像を見て航は言った。 「今、ミクロネシアに行く日本人は年間1000人くらいじゃないでしょうか? 戦前、ミクロネシアは日本が統治していた時期があったんです。30年間くらいかな?」 「え?そう…

【新古事記120】ミクロネシア

22時50分 「おはようございます」 着替えを終えた航はフロントバックに入っていった。 「おはようございます。 あー、よかった。氷川さん、いつもより遅いから何かあったのかと思った」 今日の勤務はビートルズ好きの69歳、石松さんと一緒だった。 「すみま…

【新古事記119】雨

22時35分 新幹線を降りた航は、人波を交わし急いで改札を抜けた。 駅の外に出ると雨が降っていた。大きなペデストリアンデッキの屋根の下を走り、屋根が終わると職場まで濡れながら走った。 暗証番号を入力し、社員用通用口から建物に入ると、航は一息ついた…

【新古事記118】メッセージ

「氷川さん、こんばんは。 今朝はお疲れのところありがとうございました。実はあの後『寝不足になる古事記』という本を古本屋で購入しました。 聖と二人で飲んでみたのですが、正直なところ古事記の魅力が全くわかりません。 古事記の魅力って何なんでしょう…

【新古事記117】夜中の新幹線

航は慣れない手つきで新幹線のチケットを購入した。 東京から新幹線に乗って職場に向かうという選択は、普段の航なら考えないことだった。 行き過ぎた倹約家の父に育てられた航には、お金で時間を買うという概念がなかった。むしろ罪悪感すらあった。 航は、…

【新古事記116】ガリレオ

「古事記に出てくるオノコロジマのことですけど…」 航が続けると鳥海さんが聞いた。 「イザナギとイザナミが 生んだオノコロジマですか?」 「はい、そうです。 アレ、僕は『自ずから転がる』からオノコロジマって名付けたんだと思うんですね」 「自ずから転…

【新古事記115】かぐや姫

時間が進み、4人はすっかり打ち解けていた。 鳥海さんが言った。 「古事記で火の神様が母親のイザナミ焼き殺しちゃうでしょ? あれ、怖いですよねー」 航が言った。 「ああ、ヒノカグツチですね」 江本さんが聞いた。 「ヒノカグツチ?火のカグってどういう…

【新古事記114】奇貨居くべし

「失礼します」 障子が開き、和モダンな雰囲気の個室に店員が入ってきた。 「おー、きましたね!」 吉川さんが嬉しそうな声を上げた。 店員が肉とタレの説明をした後、蒸籠に肉と野菜を丁寧に並べていった。 航が言った。 「鴨肉もあるんですねー」 「はい、…

【新古事記113】古事記の扉

「おーー」 聖はスマホの画面を眺めながら感嘆の声をあげた。 「どしたの?」 陽は聞いた。 「なほほん、あびこなんさんのお話会に申し込んだって」 「え?赤ちゃんは? ってゆーか、あびこみなみさんだろ」 「SNSであびこなんさんに連絡したら、すぐにこじ…

【新古事記112】夜の東京

鳥海さんと吉川さんは改めて名刺交換をした。 吉川さんは言った。 「へー、古典の先生でいらっしゃるんですか」 「はい、予備校で教えています」 江本さんが言った。 「そうなんです、だから氷川さんが『古事記』とおっしゃってるのを聞いて…ぜひお繋ぎした…

【新古事記111】軽い挫折

航は名刺を差し出した。男性は品のいい黒皮の名刺入れを胸のポケットから取り出した。 『鳥海比呂志』 「鳥海さんとおっしゃるんですね。珍しいお名前ですね」 「そうかもしれません」 そこへ… 「氷川さーん、江本さーん!!」 吉川さんがやってきた。吉川さ…

【新古事記110】東京、夜7時

陽が風呂から上がると、聖は口を真一文字にして『寝不足になる古事記』を読んでいた。 「どう?面白い?」 「うーーーん… 正直なところ、おもしろくはないかな」 陽は笑った。 「聖は正直だな」 「やたらと神様の名前が出てくるし、んで長いし… 世界観もよく…

【新古事記109】二人の会話

「ふーん」 聖は何度も頷きながら陽の話を聞いていた。そして続けた。 「いいなぁ、私も氷川さんとお話してみたいな」 陽は言った。 「今度、聖も紹介するよ」 「おっ、なになにその仲良し感?」 聖は笑って言った。 「そんなんじゃないけどさ。 あとね、少…

【新古事記108】東京駅

17時30分 航は東神奈川駅にいた。 「今日はよろしくお願いします。お会い出来るのが楽しみです。何かありましたらご連絡ください」 スマホで江本さんにメッセージを送り、続けて吉川さんにもメッセージを送った。 ホームに水色のラインが引かれた電車が入っ…

【新古事記107】キッチンの聖

「ん?」 目を覚ました陽は時計を見た。 17時38分 「いけねっ!もうこんな時間!!」 陽は急いでカップ麺の残骸を処分し、食器を洗い、急いで掃除機をかけた。 -------------------------- 「ふぅ」 掃除機をかけ終え一呼吸つくと、陽はソファに腰を下ろした…

【新古事記106】子供の鏡

15時45分 スマホのアラームが鳴った。 「もう時間か…」 航はベッドから身体を起こし、少しの間ぼーっとしていた。そして諦めたように立ち上がると、歯を磨き服を着替えた。 洗濯機から洗い物を取り出し、室内に干す。 16時05分 航は娘を迎えに行くため、自転…

【新古事記105】広がる世界

「ふーん…関西を中心に活動してるのか」 航は彼女が古事記を広めようとある関西で孤軍奮闘している姿を想像した。 「いつか、会えたらいいな」 航は洗い物を洗濯機に放り込んだ。シャワーを浴び時計に目をやった。 12時45分。 「さ、夜に備えて寝ないと」 航…

【新古事記104】我孫子南

陽は社務所を覗いてみた。窓は施錠されていた。窓のすぐ向こう側にはお札やお守りが並んでいたが、中に人の姿は見えなかった。 「誰もいないのかな? あ、これ…」 『天照皇大神宮』と書かれたお神札があった。 「これは確か…神宮大麻」 陽は龍橋神社の巫女さ…

【新古事記103】陽の祈り

手を合わせながら陽は神様に意識を向けようとした。しかし、色々な想いが湧いてきて集中できなかった。 (さっきの柏手…うまく鳴らなかったけどあれで大丈夫かなあ? そもそもお賽銭は五円でよかったのかな?少なすぎ? いや、でも給料少ないし、ただ払うだ…

【新古事記102】一人参り

陽が頭を下げた、その時だった。 ビューーー 「お、とと…」 背後から強い風が吹き、押し込まれるように陽は鳥居をくぐっていた。 「げっ!!」 陽は一人で変な声を発した。早く帰って眠りたいという気持ちも強かったが、境内に足を踏み入れてしまったからに…

【新古事記101】春日神社

電車が駅に入ってきた。この時間、車内は空いていた。 陽は座席に座り、掛川君に借りた本の続きを読みだした。 ・ ・ ・ ・ ・ ドサッ 何かが落ちる音がした。 陽は慌てて顔を上げた。いつのまにか眠っていたらしい。外を見ると、見慣れた風景が見えた。陽は…

【新古事記100】村人になる

航はさらに聞いた。 「そのワカン・タンカ村の村人になるにはどうすればいいんですか?」 「簡単ですよ。ホームページがあるので、そこから登録してもらえれば、後日『村人カード』を発送します。あ、登録は無料ですよ」 「へー、面白いですね。ちょっと調べ…

【新古事記099】天真

「浅間さん、まだお時間大丈夫ですか?」 航は陽に確認した。 「は、はい。僕は大丈夫です」 航はうなづくと空中さんに質問した。 「空中さん、ワカン・タンカ村というのはなんですか?」 空中さんが口を開いた。 「簡単に説明すると… 僕のアニマルメディス…

【新古事記098】名刺交換

航とオーナーは陽の目の前で名刺交換をしていた。 「あの〜…」 陽は2人のやりとりに割って入った。 「?」 「ぼ、僕にも名刺くれませんか?」 航は笑った。 「もちろんです」 航は一枚の名刺を取り出すと、両手でもち丁寧に陽に渡した。航に渡された名刺には…

【新古事記097】マスター

(古事記の講座?氷川さん、古事記の先生をやっているのか?) 航はマスターに言った。 「今度、僕の講座を聞いてみてください」 「おお、ぜひぜひ。 ここでやってくださいよ」 「え?いいんですか?嬉しいなぁ。 マスターの朗読の古事記というのも面白そう…

【新古事記096】古事記好きは惹かれ合う

「あ、氷川さん、連絡先を交換してもらえませんか?」 「もちろんです」 航は手早くSNSのQRコードをスマホの画面に表示し、陽に差し出した。 「これでいいですか?」 「氷川さん、なんか手慣れてますね」 連絡先を交換すると、航は伝票を手に持ち、レジに向…

【新古事記095】根っこ

「僕の思う『悟り』の解釈ですけど、それってこの世界と繋がっているという感覚を味わうことだ思うんですよ。 自分はこの世界の一員なんだという確信というのかな…その確信は生きていく上で圧倒的な力になります。ちょっとやそっとのことではへこたれない力…

【新古事記094】パラダイムシフト

「残念ながら悟りを得る前に僕は疲れ切ってしまいました。 ここまでしなければ幸せになれないのならば、もう諦めよう、僕には無理だ…そう思いました。 でもやっぱり、その執着から離れるのは大変でしたよ。なにせ時間もお金も投資してきたわけですから…そこ…