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【新古事記010】眠らない45歳

【登場人物】


氷川航(ひかわわたる)

45歳。最近、ホテルの夜間フロントのアルバイトを始めた。新人なのにおじさん。家族はフルタイムで働く妻と小学1年生の娘がいる。


浅間陽(あさまひなた)

33歳。大学生の頃からホテルのフロントで働いている。趣味はスポーツ観戦。特に欧州サッカー好き。


聖(ひじり)

29歳。陽の恋人で2人は同棲している。陽の同僚で日勤専属で働いている。


朴(ぱく)さん

韓国人女性。自称・韓国語を話す関西人。大阪をこよなく愛している。航と勤務時間が重なることが多く、新人の航に業務を教えることも多い。


石松さん

69歳。ダブルワークをしており、月に4回くらいしか勤務していない。ビートルズが好きで、見た目によらず英語堪能。


五十嵐さん

45歳。ホテル業一筋23年。急遽上司が異動になり、とんでもない仕事量を抱えることになる。航の採用面接時の面接官の1人でもある。

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午前05:00


「おはようございます」


仮眠を終えた朴さんが帰ってきた。航は少しホッとした。朴さんが不在の間、仕事に没頭する五十嵐さんに声をかけるのが憚られ、航はただただ黙っていたのだ。


「五十嵐さん、仮眠取ってください」


朴さんが五十嵐さんに声をかける。


「うん、もう少し」


午前05:30


外はだいぶ明るくなっていた。


「おはようごだいます」


厨房勤務のパートのおばさんがフロントバックに顔を出した。


「はい、厨房の鍵ですね。よろしくお願いします」


航は鍵をおばさんに渡す。このおばさんの挨拶は「おはようございます」でなく「おはようごだいます」だった。


(このイントネーション、もしかすると和歌山出身の人なのかもしれない。いつか出身地を聞いてみたいな)


航は密かにそんなことを思っていた。


午前06:00


スーツ姿のサラリーマンや作業着姿の職人さんがチラホラとチェックアウトのためにフロントに姿を見せ始める。


航は鍵を受けとると、パソコンに向かいチェックアウトの処理をおこなう。


「ありがとうございました。いってらっしゃいませ」


今日も新しい一日が動き出していた。


五十嵐さんは結局一睡もせず仕事に没頭していた。


(五十嵐さんは自分のことをどんな風にみているのだろう?)


航はふとそんなことを思った。同じように45年の月日を生きてきて、妻子もありながらアルバイトで生活する気楽な男。心の中で蔑んでいるのかもしれない。


航はいつか五十嵐さんとゆっくり話してみたい、そんな風に思った。


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午前06:45


「それじゃ、私、行ってくるから」


陽はふとんを被ったまま聖の声を聞いた。


「んーーー…」


寝ぼけたままおかしな返事をした。


「また後でね」


聖はそう言うと、駅に向かって歩き始めた。