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【新古事記026】DMZ

航は30歳になりたての頃、塗装工をしていたことがあった。そこには様々な人が集まっており、中には不法入国をしている外国人の姿もあった。かなりタフな世界だった。


その中に岩山さんと名乗る60代くらいの韓国人がいた。岩山さんは胆石を持っていたが、痛みが発生しても医者に行くことは出来なかった。岩山さんは予防のため日常生活で油を摂取しないことを徹底していた(効果があるのかは疑問だっだが…)。


航は岩山さんに「日本と北朝鮮が戦争したらどっちの味方をしますか?」と冗談めかして聞いたことがあった。「そんなの北朝鮮に決まってるだろ!」と怒鳴られたのを覚えている。無知だった航は、それまで韓国と北朝鮮が同じ国だったことも知らなかった。


航がその話を朴さんにすると、やがて38度線の話になった。


「私のおじいちゃんはもともと北朝鮮の人だったんです。高校生くらいの年頃で、突然家族と離れ離れになってしまった。別れも告げられないまま…それを思うと涙が出ます」


航は何も言えずに黙って朴さんの話を聞いていた。


「でも私は…おじいちゃんが南にいてくれたから良かった。氷川さん、DMZってわかりますか?」


航は頷いた。韓国と北朝鮮を隔てる北緯38度線付近にある「非武装地帯」のことだ。


「韓国も北朝鮮も、お互い見栄え良くするため、軍事境界線には体の大きい人を配置するんですよ。それでも北朝鮮の兵隊は痩せていて…太ってみせるために口に綿を入れてるなんて話もあります。


だから、北朝鮮の内情は私たちが思っている以上に酷いと思います。一番体格の良いとされる人たちがそんな状況ですから…


私は韓国に生まれて本当によかった。おじいちゃんのおかげです」


最後に朴さんは付け加えた。


「日本もね、最高ですよ。


こんな良い国ありません


徴兵制もないし…


日本に生まれるなんて…


こんなに幸せなことないと思いますよ」


その言葉を聞いた航は、嬉しかった。


「あ、氷川さん、もうこんな時間。どうぞ先に休んでください」


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航は体を休めるためベッドに入ったが、目が冴えてとても眠る気にはならなかった。


韓国と北朝鮮だけではない。戦後、ドイツも東西に分断された。日本だって例外ではなかったはずだ。


紙一重だったんだろう」


航は考えるのをやめた。とにかく身体を休めなければ…そして目を瞑った。