古事記スクール

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【新古事記050】岡山のファイアーボール

「広末さん、わざわざ東京まで、ありがとうございます」


カナコと大男は頭を下げた。


「いやいや、そんなことないよ。ちょうどこっちで打ち合わせがあったから。


ところで場所は決まったの?」


「はい。ありがとうございます。


キャパは300人くらいですね」


「順調なんだね。君たちの演奏を動画で見たとき、面白いなって思ったんだよ。


正直、万人ウケするようなコンセプトじゃないけど…


音楽で古事記を表現するなんて、なかなか面白いし、志があるもの」


カナコは聞いた。


「広末さんは古事記にお詳しいんですか?」


「いや、恥ずかしい話、よく知らないんだ。


僕、54歳だけどね。この歳になってやっと『日本は何かがおかしい』って思うようになったんだ。今更、色々な本を買って勉強してる。全く読むペースが追いつかないけどね。


だから、これからは日本の良きものにフォーカスするようなことをしていきたくて。そこに日本を取り戻す鍵があるんじゃないかと思ってる。取り戻すというか、再構築かな。だから君達のような人を応援したいんだ。


僕は高度経済成長の真っ只中に生まれ、その恩恵を受けて育った。バブルも経験したし、散々良い思いはさせてもらった。だから残りの人生は恩返しさせてもらいたい。


だって、このまま死んでいったら、今の子供達や次の世代の子たちに顔向けできないじゃないか」


カナコは言った。


「広末さん…


わたし、広末さんみたいな大人がどんどん増えたらって思います。


みんな、老後の心配とか…まぁわからなくはないですけど、そんなことばっかりで。


自分のことだけ考えて、お金稼いで遊んで欲しいもの買って…それで本当に幸せなんですかね?

 

そんなの人生のスタートラインに立つ前に死んじゃうようなものですよ、きっと」


広末さんは言った。


「僕はずっとそんな風に生きてきた。でもね、そんなの幻の幸せなんじゃないかって、やっと思えるようになったんだ。ぜんぜん満たされないんだ。誰かの力になりたいし、世の中のためになりたい。それが人間の本質なんじゃないかな」


大男が言った。


「広末さん、こいつ実家に帰った時は必ず陸軍墓地の清掃をしてるんですよ。オレが言うのもなんですけど、カナコは大したヤツです」


「カナコさん、あなたは立派な人だよ。僕は今まで何をやってきたのか…若いあなた達から教わることだらけだ。


あ、君たちのご実家って…出身は岡山だっけ?


岡山の西粟倉というところに面白そうな古民家があってね。今度、行こうと思ってるんだけど、なかなか時間が取れなくてね」


「へー、西粟倉ですか?オレはまだ行ったことないです」


「茅葺屋根のある風景を守ろうっていう…そんな夫婦がいるんだよ」