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【新古事記068】遠回り

航は続けた。


「浅間さん、僕が会社の社長ならあなたを真っ先に採用します。


組織って能力も大切ですが、それ以上に大切なものがあると思うんです。


あ、浅間さんの能力が低いと言ってるわけではありませんよ。


あなたがいるおかげで、この職場はみんなが気持ちよく働けているんですよ。


僕は色々な仕事をしてきたけど、こんなに良い雰囲気の職場は初めてです。その核にいるのがあなたです」


陽の気持ちは複雑だった。


「ありがとうございます。でも…


うーん、なんか抽象的というか…すっきりしません」


「もし、浅間さんに何かトラブルがあっても、みんなが助けてくれますよ。


これってパソコンが得意とか英語が喋れるとか…それ以上の力だと思いませんか?


ある意味、最強ですよ」


陽は航の賞賛の言葉を聞いていて、嬉しい反面恥ずかしくて耐えられなくなっていた。


「あ、ありがとうございます。


と、ところで…」


「はい?」


陽は少し沈黙し、必死に話題を変えようと考えた。


「そうそう…


掛川君に心理学以外の本も薦めたんですか?」


「ああ。


掛川さんにオススメの本を聞かれて…

 

それでアドラー古事記を薦めたんです。さっき渡したのはアドラーの本です。

 

心理学は人生の早い段階で触れた方が良いと思います。


多くの人が自分が何者であるか?に目も向けることなく、なんとなく人生を送ってしまっています。心理学は自分、あるいは他人に関心を持つ良いきっかけになると思います。


でも…」


「でも?」


陽は不思議そうな顔をした。


「でも、きっと掛川さんは遠回りするでしょうね」


「遠回り???」


「あくまで僕の私見ですが、自己啓発なんてね、何も生み出しません。


もちろん有益なものもあるのでしょうが。実生活の方がよほど大切だと思いますよ」


「え?じゃあ止めてあげたほうが…」

 

「彼は止めても止まらないでしょう。


それに、掛川さんはまだ若いですからね。遠回りすれば良いんですよ。無駄だったということに気づくのは無駄でありませんから」


航はあっさりと言った。陽は苦笑いをした。


「無駄なことに気づくのが無駄ではない???」


「ついつい最短を行きたくなりますけど、時に遠回りが近道ということもあると思いますよ」