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【新古事記112】夜の東京

鳥海さんと吉川さんは改めて名刺交換をした。


吉川さんは言った。


「へー、古典の先生でいらっしゃるんですか」


「はい、予備校で教えています」


江本さんが言った。


「そうなんです、だから氷川さんが『古事記』とおっしゃってるのを聞いて…ぜひお繋ぎしたいと思ったんです。


僕は鳥海さんの教え子だったんです。社会人になった今でもとてもお世話になっています。


あ、ちなみに僕は古事記のことはまったく知りませんよ」


航は言った。


「僕は…今45歳ですけど、この歳になって古典を学んでおけば良かったと後悔しています」


鳥海さんは言った。


「そうやって古典の良さに気づいてくれるだけで僕なんかは嬉しいです」


航が言った。


「あ、でも僕が古典の魅力を感じたのは学生の時だったかもしれません」


「え?」

 

航は続けた。


方丈記ってあるじゃないですか?


授業で先生にさされて、僕がクラスの皆の前で朗読をしたことがあったんです」


「ほう」


「読んでいる時、そのリズムがとても心地よくて、クラスのみんなも聞き入っているのがわかりました。あの一体感はなんだったのか。不思議な体験でした。先生もびっくりしていました。


あの時、古典に興味を持つチャンスは与えられていたように思うんです。でも、僕はそれを拾わなかった。惜しいなって思います。


ま、その頃は鴨長明のこと中国人だと思ってるレベルでしたけど」

 

「中国人って!!」


航のその言葉に全員が笑い、場が和んだ。


吉川さんが続いた。


「氷川さんの古事記はいいですよ。とてもパワーのあるコンテンツです。


そうだな…2年後、氷川さんはブレイクしていると思います」


「ありがとうございます、光栄です。


でも、あと2年も生活が持つかなぁ」


航は自虐的に笑った。


「氷川さん、辞めちゃダメですよ、古事記


吉川さんが真剣に言った。


「辞めませんよ、古事記は。死ぬまで辞めません」


航はサラッとそう言った。