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【新古事記135】45歳のプレッシャー

1時15分


掛川君、先に休憩に入っちゃっていいよ」


五十嵐さんはパソコンの画面から目を離さずに言った。


「大丈夫ですか?


五十嵐さん、お昼からの勤務ですよね?


僕は夕方からだから、五十嵐さんが先の方が良くないですか?」


「うん、キリのいいところまでやっちゃうからさ、先に休んで」


「…わかりました。じゃ、先に休憩入ります」


「お疲れ様です」


航が掛川さんに声をかけると、彼はぺこりと頭を下げて出て行った。


航は五十嵐さんと勤務で一緒になるのは2回目だった。彼は基本的に昼間のシフトにしか入らない。今回のように病欠が出たり、どうしても人が足りない時に夜勤に入ることがあった。


カチャカチャカチャカチャ


五十嵐さんはひたすらパソコンと向き合っていた。


「あーー、もう!」


五十嵐さんは時折、大きな声を出した。


航は気を使い、五十嵐さんに話しかけるようなことはしなかった。航は自分のやるべき業務を淡々とこなしていった。


2時05分


ひと通り業務を終えた航は静かに椅子に座っていた。航は時計を見た。遅い、時間が流れるのがとにかく遅い。そこにいるのが息苦しいくらいだった。


「氷川さん」


突然、五十嵐さんが声をかけてきた。


「は、はい?」


「業務が終わったら休みに入っちゃっていいですよ」


五十嵐さんは目をこすりながら言った。たしか航と同い年のはずだっだが、目が窪み、肌は乾燥し年齢以上に老けて見えた。


「五十嵐さん、大変そうですね」


航は思わずそう言っていた。


「ははは。


ヨネさんのことは予想外でしたが…


でも、帰れなくなったおかげで仕事が捗りますよ」


五十嵐さんは自嘲気味に笑った。そしてそれがスイッチになったのか堰を切ったように話し始めた。


「答えのわかる仕事なら、例え大変でもそれほど苦にはならないんですけどね。


相談できる相手もいないし、正直、参っています。


三木部長は、私に東大を受験しろと言ってるようなもんですよ。


三木部長のような切れ者がなんでこの組織にいるのか…私にはわかりませんよ。

 

ああ見えて、氷川さんと大して年齢変わらないんですよ」


その言葉は少し嫌味がかっていた。しかし、航は五十嵐さんが抱えているプレッシャーを察した。そして、アルバイトの自分は気楽なものだなと思った。


五十嵐さんは言った。


「すみません。ちょっと八つ当たりみたいになってしまいましたね。


さ、氷川さん、休憩に入っちゃってください」